ベトナムのソフトウェアチームがシンガポールやジャカルタの顧客にサービスを提供するとき、契約は取引の一部にすぎない。どの種類のデータが移動するのか、誰がそれに責任を負うのか、国境の両側でどのルールが適用されるのかを、誰かが見極めなければならない。ASEANは2000年のe-ASEAN枠組み協定から2018年のASEAN電子商取引協定まで、四半世紀にわたってこの種の貿易のルールづくりを進めてきた(ASEAN 2000; MTI Singapore 2018)。信頼、保護、協力は当初から議題に上っていた。
Tohは2023年、ASEANのデジタルの未来は有望だが、ミャンマー危機、デジタル保護主義の圧力、加盟国間の障壁にさらされていると論じた(Toh 2023)。ベトナムでは、その警告が現実のものとなっている。ASEANがデジタル経済枠組み協定(DEFA)の交渉を終えるのとちょうど同じ時期に、データ法と個人データ保護法が施行された。
筆者の主張は、ASEANのデジタル統合からベトナムが得る利益は、企業が市場をまたぐデータ上の義務をどれだけ予測可能な形で特定し履行できるかに、部分的に左右されるというものだ。実施状況は三つの基準、すなわちサービス提供のコスト、企業の参加能力、データ主体が実際に受ける保護によって評価すべきである。
貿易は現実のものだが、偏りがある
デジタル貿易は、異なる指標が混同されやすいため過大評価されがちだ。国際的な『デジタル貿易測定ハンドブック』は、オンラインで注文された財・サービスと、ネットワークを通じて提供されるサービスを区別している(IMF et al. 2023)。データルールの影響が最も大きいのは後者であり、本稿もそこに焦点を当てる。
WTOの推計によると、ベトナムのデジタル配信サービス輸出は2023年の約39.8億ドルから、2024年に50.7億ドル、2025年に51.8億ドルへと増加した。伸び率は27.4%の後、わずか2.3%にとどまった(WTO 2026)。2025年の輸出のうち、その他ビジネスサービスが約37.5%を占め、コンピューター・情報サービスを合わせると約82.2%に達する。機会は一握りのテック大手をはるかに超えて広がっているが、成長の道筋は平坦ではなく、一年の好調は予測にはならない。
企業の数字にも同様の注意が要る。FPTは2025年の海外ITサービス売上高が35兆3,820億ドンで14.3%増だったと発表したが(FPT 2026)、この売上には顧客へのさまざまな提供形態が混在している。Viettel Globalは主に、カンボジアなどの市場で現地に保有する会社を通じて事業を行っている(Viettel Global 2025)。これはベトナムから国境を越えて提供されるサービスとは異なる経路であり、義務も異なる。
域内ルールは、こうした貿易の条件づくりに役立つ。デジタル貿易条項は、協定が共通ルールをどう構築するかを示すが、企業がそれをどれだけうまく活用しているかは示さない(Burri & Polanco 2020)。またOECD(2026)は、ASEAN各国の規制環境がなお異なると指摘する。ASEANは2026年6月にDEFAの交渉妥結を発表し、11月の署名が見込まれている(ASEAN 2026a; 2026b)。交渉の妥結は署名、発効、実施と同じではない。また、貿易の伸びだけでは、変化がルール、需要、能力のいずれによるものかはわからない。
ベトナムのルールは現実の利益を守っている。問題はその適用のされ方だ
データ政策の動機が一つだけということはまれだ。Han(2024)がベトナム、シンガポール、インドネシアのデータローカライゼーションを比較して示したように、プライバシー、安全保障、執行能力、経済発展のすべてが作用しうる。動機だけでは、あるルールが効果的か保護主義的かは証明できない。評価すべきは手段そのものである。
第一の段階は分類だ。データ法(第60/
第二の段階は、法にすでに組み込まれている負担軽減措置を洗い出すことだ。第91号法は一部の重複した評価を回避し(第5条第4項)、第6項に列挙された場合には第20条第3項の要件に例外を設け、さらに第38条に基づき、小規模企業やスタートアップが条件付きで一部の義務の履行を後回しにすることを認めている。2026年1月1日に施行された政令第356/
法律に例外が書かれていても、企業がそれを容易に使えるとは限らない。
ZhangとMitchell(2022)が論じるように、ローカライゼーション要件は、あらかじめ違反と決めつけるのではなく、その法的・実務的な文脈の中で判断されるべきだ。重要なのは実務上の証拠である。企業がどのルールが適用されるかをどう判断するのか、どの書類を準備しなければならないのか、誰が責任を負うのか、どこで作業の重複がなお残っているのか、という点だ。
コンプライアンスが経営判断に変わるとき
義務は、具体的な作業を通じて経営上の帰結となる。企業は、関係するデータの種類、各当事者の役割、適用される条件を特定しなければならない。法務相談、契約の変更、委託先の管理、安全管理措置の証明には、いずれも時間とコストがかかる。こうした作業がサービス開始を遅らせたりコストを押し上げたりすれば、企業はサービスを設計し直すか、対象市場を絞り込むか、ベトナムから提供する代わりに現地に拠点を設けるかもしれない。
データを投入要素とみなす見方は研究によって裏づけられている。Van der MarelとFerracane(2021)はデータ規制をデータ集約型サービスの輸入減少と結びつけ、Ferracane、Kren、van der Marel(2020)はデータに依存する企業の生産性と関連づけている。いずれの研究もベトナムの新法以前のデータを用いているため、作用の仕組みは説明するが、2026年の法律のコストを数値で示すものではない。
影響も均等にはなりにくい。コンプライアンスの一部が固定費であれば、大企業は多くの契約に分散できる。小規模企業は、自分たちのために用意された軽減措置を活用する前に、明確な指針と社内の能力を必要とするかもしれない。一方で、保護には見返りもある。明確な説明責任は事故のリスクを下げ、それを求める顧客の獲得にもつながる。最高額の罰金は企業が法に違反した場合のリスクであって、事業の平均的なコストではない。
ここで一つ重要な限界がある。WTOのデータ系列は2025年で終わる一方、第91号法と第356号政令は2026年に施行されたため、貿易統計にはまだその影響が表れない。今年の実施状況を評価するには、手続きと企業の経験に関する証拠が必要だ。
ルールを使えるものにするための二つの優先課題
第一に、既存の手段が機能するかを検証すること。公安省傘下のデータ保護当局は、商工省や各分野の規制当局とそれぞれの権限の範囲内で連携し、よくあるサービス提供のシナリオを一つずつ検証すべきだ。その成果は、既存の法令と書式を結びつけ、データの種類、各当事者の役割、義務、例外、問い合わせ窓口を明確にするシナリオ別の指針となるだろう。この指針は空白を埋め、食い違う解釈を整理するものであるべきで、新たな届出の手続きを生むものであってはならない。
第二に、保護措置を伴う互換性を築くこと。ベトナムは、ASEANモデル契約条項を自国の義務や主要パートナーの義務と照らし合わせたうえで、法が認める範囲で試行的に活用できる。契約では、違反時の責任と救済措置を割り当てなければならない。シンガポールはこれらの条項を自国法の下での任意の手段と位置づけている(PDPC 2021)。これはASEAN全体での自動的な相互承認ではなく、DEFAがそれを生み出すと想定すべきでもない。
| 成果 | 提案する指標 |
|---|---|
| 義務を特定しやすい | 標準的なシナリオの解決に要する時間、公式回答の一貫性 |
| 重複作業が減る | 同じ情報を再度準備・提出する回数、企業規模別の作業時間 |
| 手段が使える | 既存の軽減措置が正しく適用されたシナリオの割合 |
| 保護が実効的である | 責任の追跡可能性、データ主体からの請求や事故への対応 |
これらは提案する指標であり、観測された結果ではない。変更の前にベースラインを設定すべきである。
本当に問われていること
ASEANのデジタルの将来が厳しい内部障壁に直面しているというTohの指摘は正しかった。ベトナムにとって最も検討に値する障壁は、データルールがあるかどうかではなく、企業がそれを使えるかどうかである。義務が明確で、法にすでにある軽減措置が機能すれば、地域統合とデータ保護は互いを支え合える。そうでなければコストは偏って生じ、それを最も負担できない企業から先に域内市場を退くことになるだろう。